
セッションが終わったあと、ぐったりして動けない。
クライアントの重い話を聞いているうちに、自分の胸まで苦しくなってくる。
一日に何人も対応した日は、家に帰ってから何も話したくない。
対人支援の仕事をしていて、そんな経験はないでしょうか。
こうした疲れは、「共感しすぎる自分の弱さ」や「まだ経験が浅いから」と説明されがちです。
プロならもっと割り切れるはずだ、と自分を責めてしまう方もいます。
でも、それは能力の問題ではありません。
使っている手法の構造から、必然的に生まれている疲れなのです。
なぜ、聞いている側まで苦しくなるのか
クライアントがつらい出来事を語るとき、その方の身体は当時の感覚を思い出しています。
心臓が速くなり、呼吸が浅くなり、身体がこわばる。
そして、その場にいるあなたの身体も、それを受け取ります。
私たちは、目の前の人の表情や声のトーン、呼吸のリズムを、頭で分析する前に身体で感じ取っています。
相手が緊張すれば、こちらの身体も緊張する。
相手が息を詰めれば、こちらの呼吸も浅くなる。
感情は、心で理解するより先に、身体で起きています。
順番は、いつもこうです。
出来事 → 身体の感覚 → 感情
だから、クライアントの話を聞いて「つらいだろうな」と頭で理解しているのではなく、あなたの身体が先に反応して、そのあとに疲れや重さがやってくる。
聞き続ければ、身体はその分だけ反応し続けます。疲れて当然なのです。
感情がどのように生まれるのかについては、感情は身体が作っている|脳科学が示す「感情のしくみ」と変わるための方向で詳しく解説しています。
「掘り下げる」ことの、二つのコスト
多くの手法は、感情の背景にある出来事を丁寧に聞いていきます。
いつ、何があって、どう感じたのか。そこに意味を見出し、解釈を変えていく。
このアプローチには確かな価値があります。
ただ、構造上、二つのコストがついてきます。
一つは、クライアント側の負担です。
話すためには、思い出さなければなりません。
思い出すということは、その場面をもう一度身体で体験するということです。
話し終えたあとにぐったりする方が多いのは、そのためです。
もう一つが、施術する側の消耗です。
聞く側も、その場面に付き合います。
何十人、何百人分の重い場面に、身体で反応し続ける。
しかも場合よっては、そのクライアントの話と自分の過去の体験が重なることもあります。
これが積み重なると、休んでも取れない疲れになっていきます。
「クライアントの役に立ちたい」という思いが強い方ほど、深く聞こうとします。
だから、真面目な人ほど消耗する。
これは性格の問題ではなく、掘り下げるという構造そのものが持つコストです。
掘り下げないのは、「原因」のほうです
ここで、一つの前提を疑ってみたいのです。
「感情を解決するには、その原因を突き止めなければならない」
本当にそうでしょうか。
感情解決メソッドエムレス(EmRes®)でも、感情が出てきた場面については話していただきます。
どういう状況だったのか、そのときの感情が出てくるところまで、うかがいます。
違うのは、その先です。
なぜそう感じたのか。
原因はどこにあるのか。
どう解釈し直せばいいのか。
エムレス(EmRes®)では、そこを掘り下げていきません。
感情が出てきたら、そこから先は身体の感覚に焦点を移し、あとは施術士の誘導に身を任せていただきます。
心臓のドキドキ。
胸の締めつけ。
胃のざわつき。
扱うのは、この感覚です。
感情は、身体の感覚から作られている。
だとすれば、変えるべきなのは出来事の解釈ではなく、その場面で起きる身体の反応のほうだ、という考え方です。
原因を追わないと、何が変わるのか
原因の分析に立ち入らないことで、双方の負担が変わります。
クライアントにとっては、つらい出来事を何度も語り直したり、「なぜ自分はこうなのか」を掘り続ける必要がありません。
話すのは感情が出てくるところまで。
そのあとは委ねていただけます。
施術する側にとっては、重い話の中に長くとどまり続けることがなくなります。
原因を探り、解釈を組み立てるという負荷もありません。
感情をもらって疲弊する構造から外れられる。
これは「冷たく接する」ということではありません。
クライアントに丁寧に寄り添うことに変わりはない。
ただ、寄り添う対象が「つらかった過去」ではなく「今、身体に起きている感覚」になる、ということです。
長く続けていくためには、この違いは小さくありません。
今の手法を、手放す必要はありません
誤解のないようにお伝えしたいのですが、エムレス(EmRes®)は既存の手法を否定するものではありません。
傾聴にも、認知に働きかけるアプローチにも、それぞれの役割があります。
薬が必要な方もいます。
エムレス(EmRes®)は、それらに足すものです。
「話は十分に聞いた。理解も深まった。それでも、あの場面になると身体が反応してしまう」
そういうクライアントに対して、もう一手を持てるようになる。
今できていることはそのままに、選択肢が増える。
そういう位置づけの技術です。
まずはモジュール1から
エムレス(EmRes®)を学ぶ最初の一歩が、施術士養成講座のモジュール1です。
3日間で、エムレス(EmRes®)の基本を身につけ、施術士として活動できるところまで進みます。
受講資格は問いません。
エムレス(EmRes®)をまったく知らない状態からでも受けられるように設計されています。
セラピスト、カウンセラー、コーチとして活動している方。
パーソナルトレーナーや理学療法士など身体を扱う専門家の方。看護師や薬剤師として、患者さんの感情面にも関わりたい方。
これまでさまざまな立場の方が学ばれています。
モジュール1で何を学ぶのかについては、「言葉の限界」を感じるセラピストへ。脳科学が解明した、トラウマを掘り下げない感情解決メソッド「エムレス」とは?でも解説しています。



