
「パニック発作は、脳が誤って危険信号を出してしまう状態です」
そう説明されて、少しほっとしたあとに、こう思いませんでしたか。
「じゃあ、自分の脳は壊れているということなのか」と。
危険な場所でもないのに心臓が暴れ出す。
頭では何ともないと分かっているのに、胸が締めつけられる。
そんな経験を繰り返していれば、「自分の身体はどこかおかしくなってしまった」と感じても無理はありません。
でも、そうではないのです。
あなたの脳も身体も、誤作動しているわけではありません。
むしろ、過去に学習したとおりに、正確に反応しています。
この記事では、パニックや予期不安のときに身体で何が起きているのか、そしてなぜ「壊れていない」ことが希望になるのかをお伝えします。
「誤作動」という言葉が、見落としていること
たしかに、パニック発作が起きている場面に、多くの場合は実際の危険はありません。
電車は安全に走っていますし、美容院で座っている時にあなたの身に何かが起きるわけでもない。
だから外から見れば「危険がないのに危険反応が出ている=誤作動」と説明したくなります。
そして、そう説明している人が多いです。
けれど、この説明には抜けている視点があります。
身体が反応の材料にしているのは、「今この瞬間が安全かどうか」ではなく、「過去に似たような状況で強いストレスを感じたことがあるか」という視点です。
一度、強い恐怖や苦しさを経験した場面を、身体は記憶します。
それは「電車」「エレベーター」といった場所やその時の状況を記憶するとともに、そのときに感じた身体の感覚も一緒に記憶します。
心臓が激しく打つ感じ。
息が浅くなる感じ。
足元がふわっとする感じ。
身体はこうした感覚を、「危険が迫っているときのサイン」として覚えます。
そして次に似たような状況に出会ったとき、確認を待たずに先回りして、あなたを守る準備を始めます。
そして、過去に記憶した身体の感覚を再現します。
心拍を上げ、呼吸を速め、筋肉に力を入れる。
いつでも逃げられるように、身体を臨戦態勢にする。
これは異常ではありません。生き物として、極めて正常な働きです。
反応が速すぎるから、「考える」では間に合わない
もう一つ大切なのは、この反応の速さです。
危険の記憶にもとづく身体の反応は、私たちが「これは安全だ」と考えるよりも先に始まります。
だから、電車に乗る前に何度も「大丈夫、今まで何も起きなかった」と言い聞かせても、ホームに立った瞬間に身体はもう構えている。
順番はいつも、こうなっています。
苦手な出来事 → 身体の感覚 → 感情
先に出来事があり、身体が反応し、そのあとで「怖い」「不安だ」という感情になります。
ですが、私たちは逆だと思い込んでいます。
「怖いと思うから、身体が反応する」と。
だから「怖いと思わないようにしよう」「考え方を変えよう」と、心のほうに働きかけてきた。
けれど、感情は身体の感覚から作られています。
順番の後ろ側にある感情をいくら変えようとしても、手前にある身体の反応はそのまま残る。
「頭では分かっているのに、身体が言うことを聞かない」
多くの方がそう表現するこの状態は、意志の弱さではなく、仕組みどおりの結果なのです。
感情がどのように作られているかについては、感情は身体が作っている|脳科学が示す「感情のしくみ」と変わるための方向で詳しく解説しています。
壊れているのではなく、働きすぎている
ここまでをまとめると、こうなります。
- 脳や身体が故障しているのではない
- 過去に「危険だった」と覚えた記憶にもとづいて、正確に反応している
- ただ、その記憶が今のあなたの生活には合わなくなっている
つまり、壊れているのではなく、働きすぎている。
守る必要のない場面まで、身体が全力で守ろうとしている。それがパニックや予期不安の正体です。
この違いは、言葉遊びではありません。
「壊れている」と考えるか、「記憶のとおりに働いている」と考えるかで、選択肢がまったく変わってきます。
壊れているのなら、直すか、抑えるしかありません。
けれど記憶にもとづく反応なら、その記憶のほうを覚え直すという選択肢が出てきます。
「覚えた」ものは、「覚え直せる」
身体が覚えた記憶は、書き換わらない固定されたものではありません。
一度作られた記憶が、ある条件のもとで不安定な状態になり、そこに新しい情報が加わることで書き換わっていく。
この現象は「記憶の再固定化」と呼ばれ、近年の神経科学で研究が進んでいる領域です。
くわしくは記憶の再固定化とは何か|感情が繰り返される理由と、脳が変わるメカニズムで説明していますが、ここで大切なのは一点だけです。
身体が覚えたことは、身体から覚え直せる。
そしてこれは、あなたの脳や身体が正常に機能しているからこそ可能なことです。
記憶する力があるということは、覚え直す力もあるということだからです。
壊れていないからこそ、変われる。
これが、「誤作動ではない」という話の、いちばん大事なところです。
心を強くする必要はありません
ここまで読んで、「では何をすればいいのか」と思われたかもしれません。
一つだけ、はっきりお伝えできることがあります。
心を強くする必要はありません。考え方を変える必要もありません。
これまで、たくさん努力されてきたと思います。ポジティブに考えようとした。気にしないようにした。怖い場面に何度も飛び込んで、慣れようとした。
それでも変わらなかったのは、あなたの努力が足りなかったからではなく、働きかける場所が違っていたからです。
変えるのは、心ではなく、身体の反応のほうです。
感情解決メソッドエムレス(EmRes®)は、考え方を変えるのではなく、身体が覚えてしまった記憶に直接アプローチしていく方法です。
身体がその場面で反応しなくなれば、そのあとに続く感情も出てこなくなります。
嫌な状況になっても、心臓が暴れない。
胸が締めつけられない。
だから、怖くならない。
「我慢して乗り切れるようになる」のではなく、「そもそも反応しない身体になる」。それがエムレス(EmRes®)の目指すところです。
まとめ
- パニックは、脳の誤作動でも、心の弱さでもありません
- 身体が過去に覚えた記憶のとおりに、正確に反応しているだけです
- それは、あなたを守ろうとする正常な働きです
- 壊れていないからこそ、その記憶は覚え直すことができます
もし今、「自分の脳はおかしくなってしまった」と感じているなら、その心配は手放してください。
あなたの身体は、あなたを守るために働き続けてきました。ここまで、ずっとです。
その働き方を、今の生活に合った形に変えていく。それは、できることです。
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