
前回の記事では、「気にしない」や「ポジティブに考える」といった対処法が根本解決になりにくい理由と、エムレスが他のアプローチとどう違うかをお伝えしました。
この記事では、変化の第一歩として「身体に気づくこと」をお伝えします。でも、「気づきましょう」という話をする前に、まず知っておいてほしいことがあります。
なぜ、頑張って考えれば考えるほど、余計に疲れるのか。その理由が分かると、「気づく」ことの意味がはっきり見えてきます。
📋 この記事でわかること
① 人間関係の疲れの正体は何か
② 「なんとかしよう」と考えるほど消耗が増える理由
③ 脳の仕組みからわかる、身体に意識を向けることの効果
④ 今日から使える「身体のサインへの気づき方」
疲れの正体は「感情」ではなく、身体の反応の積み重ね
人間関係で消耗しやすい方が1日の終わりにどっと疲れを感じるのはなぜか。それは、気を使ったり、感情が動いたりするたびに、身体が反応して、また落ち着いてを繰り返しているからです。
頭の中でネガティブなことを考えているとき、身体は必ず反応しています。「あの発言、大丈夫だったかな」と振り返るたびに、胸がざわっとしたり、肩に力が入ったりしている。「また怒らせてしまったかも」と不安になるたびに、胃が締まったり、呼吸が浅くなったりしている。
この反応と回復の繰り返しが1日続けば、身体がほとんど反応しない人と比べて、単純に消耗量がまったく違います。激しい運動をした日の夜にどっと疲れるのと、構造的には同じことが起きています。
疲れの正体は、感情そのものではありません。
感情が動くたびに繰り返される、身体の反応の積み重ねです。
逆に言えば、身体が反応しなければ感情的にもならない。
それがエムレスの出発点にある考え方です。
「なんとかしよう」と考えるほど、なぜ余計に疲れるのか
人間関係で疲れたとき、多くの方は「なんとかしなければ」と頭で考え始めます。原因を探したり、次はこうしようと対策を練ったり、あの場面を何度も振り返ったり。
ところが、考えれば考えるほど疲れが増していく——そんな経験はないでしょうか。
これには明確な理由があります。
頭で考えているとき、身体は同時に反応し続けています。
「あの場面どうすればよかったか」と考えながら、胸がざわついている。
「次はうまくやれるか」と不安になりながら、肩に力が入っている。でも頭で考えることに集中しているため、身体の反応には気づかない。
気づかないまま反応だけが積み重なる——これが「考えるほど疲れる」状態の正体です。
「気にしないようにしよう」と頭で考えようとしても変わらないのは、その考え自体がまた身体の反応を引き起こしているからでもあります。
脳はふたつのことを同時にできない
では、どうすればいいのか。ここに、脳の重要な仕組みがあります。
頭で考えているときは身体に意識が向きにくく、身体の感覚に意識を向けているときは考えることができなくなります。これは感覚や印象の話ではなく、脳科学的に確認されていることです。
脳の処理能力には限りがあり、ふたつのことを同時に行おうとすると、どちらかの精度が大きく落ちます。
これは「二重課題干渉」と呼ばれる現象で、京都大学・船橋新太郎教授らの研究によって前頭連合野の神経メカニズムとして実証され、科学誌「Nature Neuroscience」にも掲載されています。
「考えながら運転していると事故を起こしやすい」「電話しながらメモが取れない」というのも、まったく同じ仕組みです。
頭で考えることと、身体の感覚に意識を向けることは、脳の同じ処理リソースを使います。だから、身体に意識を向けると、自然と思考が止まります。
「あの発言、大丈夫だったかな」というループが頭の中で回り続けているとき、「今、胸のあたりがざわざわしているな」と身体の感覚に意識を向けてみてください。
不思議と、頭のループが止まりやすくなります。
これは「気にしないようにしよう」とは、まったく違うアプローチです。
考えることをやめようとするのではなく、意識を身体に向けることで、自然に考えが止まる。脳の仕組みを利用した切り替えです。
そして身体に意識が向いている間は、身体の反応が積み重なることも止まります。つまり、身体に気づくこと自体が、消耗を止めるスイッチになります。
まず知っておきたい「身体のサイン」

では、実際にどこに意識を向ければいいのでしょうか。人間関係の場面で疲れやすい方に、比較的共通して現れやすいサインがあります。自分に当てはまるものがないか確認してみてください。
肩・首・顎
気づくといつも肩に力が入っている。顎を食いしばっていることがある。首が常に張っている感じがする。
胸・みぞおち
人と会う前や会話中に、胸がざわざわする。みぞおちのあたりがきゅっと締まる感じがある。
お腹・胃
緊張する場面でお腹が痛くなりやすい。胃に何か詰まったような感じがある。
呼吸
気づくと呼吸が浅くなっている。誰かと話しているとき、息を詰めていることがある。
手・足
手が冷たくなりやすい。緊張すると手に力が入る。足がじわっと汗ばむ感じがある。
「そういえばいつもこうなってるかも」と気づいた方は、すでに大事な一歩を踏み出しています。
「気づく」ための3つの問いかけ
日常の中で身体のサインに気づくために、次の3つの問いかけを使ってみてください。答えを出そうとしなくていいです。ただ確認するだけで十分です。
1:今、身体のどこかに「力が入っている感じ」はありますか?
肩、顎、手、お腹……どこでも。「ない」でも「分からない」でも大丈夫です。
2:人と会う前後に、身体のどこかが変化しますか?
会う前にざわざわする、会った後にどっと疲れる、など。どこがどう変わるかを観察してみてください。
3:人間関係のことを考えているとき、身体はどんな状態ですか?
考えながら、肩が上がっていないか。胸が締まっていないか。呼吸が止まっていないか。
この3つを試してみると、「考えているときに身体も反応していた」ということに初めて気づく方が多いです。その気づきだけで、思考のループが少し止まりやすくなります。
まとめ:気づくことが、変化の出発点
人間関係の疲れの正体は、感情のたびに繰り返される身体の反応の積み重ねです。「なんとかしよう」と頭で考えるほど消耗するのは、考えること自体が身体の反応を引き起こし続けているからです。
身体に意識を向けることは、脳の仕組み上、頭のループを自然に止めます。解決しようとしなくていいのです。まず自分の身体に何が起きているかに気づくこと——それが、すべての出発点です。
次回の第4回では、この「気づき」をさらに進めて、身体が覚えてしまった記憶に直接働きかけるエムレスのアプローチを具体的にお伝えします。
※効果には個人差があります。
📚 このシリーズの記事一覧
第2回:一般的な対処法が効かない理由とエムレスの違い(比較編)
▶ 第3回:まず「自分の身体」に気づくことから(気づき編)← 今この記事
第4回:身体が覚えた記憶が変わると、人間関係が変わる(解決編)
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樋渡 旭(Hiwatari Akira)
EHI認定エムレス(EmRes®)インストラクター/施術士
現役パーソナルトレーナー。「身体と感情の両方を扱える専門家」として、パニック障害・不安障害・HSPによる生きづらさなど300名以上のサポートを行う。
東京・千代田区(半蔵門・麹町駅徒歩4分)/オンライン全国対応



