「同じことでまた感情的になってしまった」
「何年も向き合ってきたのに、あの場面になるとまた同じように反応してしまう」
そういう経験、ありませんか?
感情の問題が「繰り返される」のには、脳科学的な理由があります。そして同じ理由から、「変わることができる」根拠もあります。
その鍵となるのが、記憶の再固定化(Memory Reconsolidation)というメカニズムです。
なぜ感情は「繰り返される」のか
まず前提として、なぜ同じ感情が何度も繰り返されるのかを整理しておきます。
脳は過去に強いストレスや恐怖を経験したとき、その体験を「この状況は危険だ」という記憶として保存します。このとき身体の感覚——心臓のドキドキ、胸の締めつけ、胃のざわつきなど——もセットで記憶されます。
そして似た状況に出会うたびに、脳は過去の記憶を参照して「これは危険だ」と予測し、身体に同じ感覚が生じます。その身体反応を脳が「感情」として解釈する——これが感情の繰り返しのメカニズムです。
感情が身体から生まれるしくみについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
問題は、この「脳の予測」は一度形成されると、通常はなかなか変わらないことです。
だから「考え方を変えよう」「気にしないようにしよう」と頑張っても、身体レベルでの反応は変わらないまま——ということが起きます。
記憶は「呼び出したとき」に書き換えられる
ここで、脳科学が明らかにした重要な発見があります。
記憶は一度保存されたあと、「固定」されているわけではありません。記憶を呼び出した瞬間、その記憶は一時的に書き換え可能な不安定な状態になります。
この不安定な状態のときに適切な体験をすると、記憶は「書き換えられた内容」として再び固定される——これが再固定化です。
2000年代初頭にニューヨーク大学のカリム・ノーダー博士らの研究によって明らかになったこのメカニズムは、「恐怖記憶の消去」に関する神経科学分野で注目を集めました。その後の研究で、感情を伴う記憶全般に同じ原理が働くことが示されています。
さらに2026年3月、理化学研究所の研究チームが学術誌『Neuron』に発表した研究では、この再固定化を制御する神経回路と分子メカニズムが世界で初めて包括的に解明されました。記憶が想起された際に脳の青斑核からノルアドレナリンが放出され、扁桃体の特定の受容体を介して記憶が書き換えられるという一連の流れが明らかになっています。また同研究では、ストレスがかかった状態で嫌悪記憶を思い出すと、その記憶がより強く再固定化されてしまうことも示されました。「つらい記憶を無理に思い出そうとするほど苦しくなる」という現象は、このメカニズムから説明できます。
つまり、記憶は変えられる。それも、記憶を「思い出した瞬間」に。
「再固定化」が起きる条件
ただし、記憶を呼び出せば自動的に書き換わるわけではありません。再固定化が起きるには、条件があります。
ポイントは、記憶が不安定になっているときに、「古い予測と矛盾する新しい体験」が起きることです。
たとえば「この状況は危険だ」という古い記憶が呼び起こされている最中に、身体が「実はここは安全だ」と感知できれば、脳はその記憶を「今の現実」に合わせて更新します。
逆に言うと、記憶を思い出しながらまた同じように強い恐怖や苦痛を体験してしまうと、古い記憶がそのまま、あるいはさらに強く再固定化されてしまうこともある。
「あの体験を思い出すたびに、ますます苦しくなる」という現象はここから説明できます。
EmResが「身体の感覚」にアプローチする理由
EmRes(エムレス)のアプローチは、この再固定化のメカニズムと深く関係しています。
EmResのセッションでは、解決したい感情が生まれた場面を思い起こします。すると、そのときの身体感覚——胸の締めつけ、胃のざわつき、心臓のドキドキ——が呼び起こされます。
この瞬間、記憶は不安定な不安定な状態(再活性化された状態)になっています。
そこで、過去の体験を再び味わおうとするのでも、感情を抑えようとするのでもなく、ただ「身体に現れている感覚」に意識を向けます。
判断しない。解釈しない。ただ感じる。
すると身体の感覚は自然に変化し、静かになっていきます。脳はこの変化を「この刺激は今は危険ではない」という新しい情報として受け取り、記憶を書き換えた状態で再固定化します。
結果として、次に同じ状況に立ったとき、古い反応が起動しなくなる——これがEmResで変化が起きる理由です。
「一度変わったら戻らない」のはなぜか
EmResの特徴として、「一度解決した感情は再発しにくい」ということがよく言われます。
これも再固定化で説明できます。
再固定化は「記憶の上書き」ではなく、「記憶の更新」です。古い反応パターンが「今は必要ない」という情報で書き換えられるため、同じトリガーに出会っても、書き換え前の反応は呼び出されにくくなる。
一時的な気晴らしや抑制とは本質的に違います。感情の根っこにある身体記憶そのものが変わっているので、状況が変わっても効果が持続します。
心へのアプローチをやめて、身体へのアプローチに変える
記憶の再固定化が示すことは、一つの希望です。
脳は、変わることができます。何年も繰り返してきた感情反応であっても、それは「身体に残った記憶」であり、適切なアプローチで書き換えることができる。
「変わらないのは自分が弱いから」でも「もう手遅れだから」でもありません。
ただ、心に働きかけていたのを、身体に変えるだけでいい。
扁桃体が感情反応においてどのような役割を果たしているかは、こちらの記事もあわせてご覧ください。
また、薬やカウンセリングとEmResのアプローチの違いについてはこちらで詳しく解説しています。
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樋渡 旭(Hiwatari Akira)
EHI認定エムレス(EmRes®)インストラクター/施術士
現役パーソナルトレーナー。「身体と感情の両方を扱える専門家」として、パニック障害・不安障害・HSPによる生きづらさなど300名以上のサポートを行う。
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